【弾性変形と塑性変形】?破壊に至るメカニズム

なぜ「構造物の材料」の「応力(ひずみ)」や「変位」を計測管理する必要があるのでしょうか?

それは、材料は外力に対して変形しますが限度を越えると塑性変形というのを起こして「破壊に至る」からです。

材料は、弾性と塑性という性質を持ちます。

弾性(だんせいelasticity)とは、「を加えると変形するが、力を取り除くと元の寸法に戻る」性質をいう。
塑性(そせいplasticity)とは、「を加えて変形させたとき、変形したままの状態になる」性質のことで、力を取り除いても「残留ひずみ」が残る

例えば、「バネ」を適度な力で引き伸ばしたり縮めても手を離すと元の長さに戻ります。しかし「限度」を越えて力をかけるともはや元の長さには戻りません。 
この「限度」を 「弾性限度」といい、これより小さい領域を「弾性域(その変形を弾性変形)」大きい領域を「塑性域(塑性変形)」
といいます。

しかし弾性・塑性が重要なのは、単に「除荷(力を取り除く)しても変形が残るかどうか」ということではありません。
部材に外力が働くと材料内には「変形させまいと働く、外力に対する抵抗力」すなわち「応力」が発生しますが、
・「弾性域」では、「変形(変位)に比例して応力が大きくなる」のに対し
・「塑性域」では「変位が増大しても応力がそれほど大きくならない」

ことにあるのです。

外力による変形と破壊

「それの何が問題なの?」と思う方がいるかもしれません。

どういうことかといえば、
「弾性限度を越えない場合」は
1)材料に外力を加えられると変形する
2)変形量に比例して応力が増大する
3)やがて外力と応力が「釣合う」変形量に達すると「変形が止まる」
というメカニズムで「材料の破壊が防止」されます。

これは作用・反作用としてよく知られている現象です。
しかし「もし作用より反作用が小さかったら」どうなるでしょう?
まさに「ヌカに釘」状態で変位だけが増大してしまいます。

「弾性限度を越える」と
1)変形が増大しても、もはや応力がそれほど大きく増加しない
2)応力が外力に追いつかなくなり、外力が変わらなくても材料の変形だけが増大し続ける
3)その結果、「破壊に至る」ということです。

ただし「塑性域になると、ただちに応力が大きくならない」わけではなく、「変位に比例するほど大きくならない」もののじわじわとは増大しますので、「少々塑性域に入っても、変形による応力が外力に追いつく範囲であれば破壊を防げる」といえます。

もし「外力が変形による応力より大きい」とそのままでは破壊を食い止めることはできません。

しかし、弾性のない液体や気体でさえ「器に密封して拘束」してやれば「弾性体として機能する」ように、塑性領域に至った素材でも「補強や改良で拘束」してやることで「応力を増加させる」ことができるのです。

応力(ひずみ)管理

以上のメカニズムを踏まえて、「対象物の破壊を避ける」ためには
1) 「変形量や応力を監視」する
2) 「外力によって対象物に生じる応力」が「弾性限度を越えない」(少なくとも「変形が止まり収束する)ように「管理」する
3) もし越えれば「拘束条件を厳しくする」といった「対策」をする
ことが求められるわけです。

それが「応力(ひずみ)管理」です。